先に結論:災害時の補聴器は、本体だけでなく、電池式なら機種に合う未開封の予備電池、充電式なら純正充電器と取扱説明書で使用が認められた電源手段を一緒に備えます。さらに、補聴器のメーカー・機種・電池型番・購入店の連絡先と、聞こえにくいことを示すカードを紙でも用意してください。避難所では音声案内だけでは重要情報を取りこぼすことがあるため、受付時に文字や掲示での情報提供を依頼する準備も必要です。
この記事は補聴器の調整や医療判断を代替するものではありません。必要な予備電池の種類、充電器との組み合わせ、保管条件は機種ごとに違います。実際の補聴器の取扱説明書と販売店の案内を優先し、聞こえ方の変化や耳の症状がある場合は耳鼻咽喉科医または補聴器販売店へ相談してください。
災害時に補聴器の備えが必要な理由
補聴器は会話のためだけでなく、避難指示、館内放送、物資配給、診療の呼び出しなどを受け取る助けになります。東京都心身障害者福祉センターは、補聴器や携帯電話を枕元に置いてすぐ持ち出せるようにすること、補聴器用電池の予備を準備することを案内しています。また、内閣府に提出された聴覚障害者からの避難所への要望では、音声と同時に文字でも知らせること、補聴器の修理や電源確保への配慮が挙げられています。
災害直後は、いつも利用する販売店へすぐ行けるとは限りません。2026年4月の災害支援案内でも、補聴器や空気電池の提供には交通事情などにより時間がかかる場合があるとメーカーが注意しています。支援を前提にせず、普段使う補聴器を自分で維持できる最小限のセットを用意しておくことが現実的です。
電池式と充電式で備え方を分ける
空気電池式:型番を照合し、シールをはがさず保管する
補聴器用の空気電池には複数のサイズがあります。形が似ていても互換とは限らないため、補聴器本体、取扱説明書、現在使っている電池パッケージで型番を照合してください。予備を小分けにするときも、型番と使用期限が読めるパッケージのまま保管します。
空気電池はシールをはがすと発電が始まり、補聴器を使っていなくても消耗します。シグニアの取扱説明書は、使用するときにシールをはがし、一度はがすと未使用でも消耗すると案内しています。防災袋へ入れる予備もシールをはがさず、使用済み電池と混ざらないように分けてください。
保管は常温を基本とし、直射日光、高温多湿、冷蔵庫、真夏の車内を避けます。金属製の鍵、硬貨、クリップと一緒にすると電池が放電したり、トラブルの原因になったりするため、購入時のパッケージまたは電池専用ケースに入れます。補聴器用の乾燥ケースに空気電池を一緒に入れてよいとは限りません。取扱説明書で禁止されている場合は、補聴器から電池を外して別に保管します。
充電式:純正充電器と非常用電源の適合を確認する
充電式は「モバイルバッテリーがあれば充電できる」と一律には言えません。必要な充電器、入力端子、入力電圧、充電時間、充電ケース自体に蓄電機能があるかは機種によって異なります。純正充電器を持ち出しセットへ入れ、取扱説明書に記載された入力条件を確認してください。モバイルバッテリーやポータブル電源を使う場合も、補聴器メーカーまたは販売店へ接続可否を確認し、平時に説明書どおりの手順で充電できることを確かめます。
停電時のために、充電器の製品名、必要なケーブル、入力条件を紙へ書きます。ケーブルは見た目が同じでも給電仕様が違うことがあります。別の家族が準備するときに間違えないよう、補聴器専用と分かる袋へまとめてください。内蔵リチウムイオン電池の補聴器は、高温や湿気の多い場所、真夏の車内を避けるようメーカーが注意しています。
補聴器の防災持ち出しセット
持ち出し品は、補聴器を今すぐ使うための物と、避難生活で維持するための物に分けると点検しやすくなります。次の一覧を基本に、本人の機種と生活に合わせて調整してください。
- 現在使用中の補聴器と、落下や水ぬれを避けるケース
- 電池式は、機種に適合する未開封の予備電池と電池専用ケース
- 充電式は、純正充電器、必要なケーブル、適合確認済みの非常用電源
- 取扱説明書または必要ページのコピー
- メーカー、機種名、製造番号、電池型番、購入店・修理窓口を記した紙
- 乾燥ケース、ブラシ、クリーニング用品など、説明書で指定された手入れ用品
- 筆談用のメモ帳と太いペン、スマートフォンの文字入力・音声文字変換を使うための充電手段
- 「耳が聞こえにくい」「文字で伝えてください」など必要な配慮を書いたヘルプカード
電池を何日分用意するかは、補聴器の機種、設定、使用時間、環境で変わります。メーカーもカタログ上の寿命と実際の寿命が異なると案内しているため、「一般に何個」と決めつけず、普段の交換間隔を記録し、自宅で想定する備蓄日数分に点検用の余裕を加えて販売店へ相談してください。充電式も、公称使用時間だけで判断せず、本人の実際の使用時間と停電中に充電できる回数を基準にします。
避難所では聞こえにくさと希望する伝達方法を最初に伝える
避難所へ着いたら、受付で補聴器を使用していること、音声放送だけでは情報を受け取りにくいこと、文字・掲示・筆談など希望する方法を伝えます。東京都の「東京防災」は、聴覚障害がある人の持ち出し品として補聴器用電池、筆談用具、文字情報を受信できる機器などを挙げ、受付時に耳が聞こえないことを申し出るよう案内しています。
本人が伝えにくい状況に備え、カードには氏名、緊急連絡先、希望する伝達方法、補聴器の左右と機種、電池型番、充電方法を書きます。ただし、住所や病歴など必要以上の個人情報を外から見える場所へ書かないようにします。カードは防災袋、財布、家族のスマートフォンなど複数箇所に分散すると、どれか一つを失っても確認しやすくなります。
補聴器が使えない場合にも備え、掲示板を定期的に確認する、配給や避難情報を文字で知らせてもらう、近くの支援者と確認時刻を決めるなど、代替手段を一つではなく複数用意します。スマートフォンの音声文字変換は通信が不安定な場面や電池切れでは使えない場合があるため、紙とペンも残してください。
半年ごとの点検で「持っているが使えない」を防ぐ
防災セットは半年ごと、または電池交換・機種変更・充電器交換のたびに見直します。空気電池は使用期限とシールの状態を確認し、普段使う分と入れ替えます。充電式は充電器とケーブルを接続し、説明書どおりに充電が始まるか確認します。補聴器本体は汗や湿気の影響を受けるため、日常の手入れと販売店での定期点検も続けます。
家族や支援者にも、補聴器の保管場所、左右の見分け方、電源の入れ方、電池交換または充電方法を共有します。ただし、音量や設定を本人の判断なく変更しないでください。修理や調整が必要な場合は、自分で分解せず販売店へ相談します。
今日できる最小の一歩は、現在使っている電池型番または充電器名を確認し、販売店の連絡先と一緒に紙へ書くことです。そのうえで予備電池や充電手段をそろえ、枕元と非常持ち出し袋のどちらからでも補聴器へ手が届く配置を決めましょう。
出典・一次情報
- 東京都心身障害者福祉センター「耳の不自由な方のための防災マニュアル」(2026年8月6日確認)
- 内閣府「一般避難所に対する要望(聴覚障害者)」(2026年8月6日確認)
- 東京都「東京防災」聴覚障害がある人の備え(2026年8月6日確認)
- シグニア補聴器 取扱説明書(空気電池の取扱い)(2026年8月6日確認)
- リオネット補聴器「電池の持ちが短い」(2026年8月6日確認)
- リオネット補聴器 充電式補聴器の安全上・使用上の注意(2026年8月6日確認)
- リオン「令和8年岩手県大槌町の林野火災による被災者支援」(2026年8月6日確認)