先に結論:「指定緊急避難場所」は、洪水・土砂災害・津波・地震などの危険から命を守るために緊急的に逃げる場所です。「指定避難所」は、危険がなくなった後、自宅へ戻れない人などが一定期間滞在する施設です。同じ学校や公民館が両方を兼ねる場合もありますが、すべての災害に安全とは限りません。平時に、災害の種類ごとの行き先と安全な経路を自治体の防災マップで確認してください。
2026年8月30日から9月5日は防災週間です。中央防災会議は令和8年度の取組として、防災マップなどによる指定緊急避難場所・指定避難所の位置と経路の把握を挙げています。この記事では、似た言葉を混同せず、「危険が迫ったときにどこへ向かうか」を家族で決める手順を整理します。
避難場所と避難所は目的が違う
指定緊急避難場所は、まず命を守る場所
内閣府によると、指定緊急避難場所は災害の危険から命を守るために緊急的に避難する場所です。市町村が、洪水、崖崩れ・土石流・地滑り、高潮、地震、津波、大規模な火事、内水氾濫、火山現象などの災害種別ごとに指定します。
大切なのは「近所の学校だから、どの災害でも安全」と決めつけないことです。地震に対応する場所でも、洪水や津波には対応していない場合があります。案内板や地図にある災害種別の図記号を見て、いま直面している危険に対応しているかを確かめます。
指定避難所は、一定期間滞在する施設
指定避難所は、災害の危険がなくなるまで、または自宅が被災して戻れない場合などに一時的に滞在する施設です。学校の体育館や公民館などが指定されることがあります。指定緊急避難場所と同じ施設を兼ねることもありますが、役割は別です。
指定されていても、発災直後から必ず開設されるとは限りません。建物の安全確認、被害状況、災害の種類によって開設されない場合や、別の施設へ案内される場合があります。自治体の避難情報、公式サイト、防災アプリ、広報などで開設状況を確認してください。
災害別に「最初の行き先」を決める
避難は、全員が一律に指定避難所へ行く行動ではありません。自宅にいることが安全な場合は在宅避難も選択肢です。一方、危険が切迫しているときは、持ち物をそろえることより身の安全の確保を優先します。次の考え方を、自治体のハザードマップと組み合わせて確認しましょう。
想定する災害 | 先に確認すること | 行き先を決める要点 |
|---|---|---|
洪水・内水氾濫 | 浸水想定区域、浸水深、浸水継続時間 | 洪水・内水氾濫に対応する指定緊急避難場所か、浸水前に移動できる安全な親族宅などを確認する |
土砂災害 | 土砂災害警戒区域、崖や谷からの距離 | 区域外の安全な場所へ早めに移動する。雨が強まってから危険な斜面沿いを通らない |
津波 | 津波浸水想定、避難対象地域、到達方向 | 海や川から離れ、津波に対応する高い場所・津波避難ビルなどへ速やかに向かう |
地震・大規模火災 | 建物、家具、周辺火災、道路の被害 | まず身を守り、揺れが収まってから周囲を確認。自治体が地震・火災に対応すると示す場所と経路を使う |
上の表は一般的な確認順です。実際の避難先や行動は地域の地形、建物、自治体の指定、発令中の情報で変わります。河川沿い、地下道、崖沿い、ブロック塀の近くなど、災害時に危険が増す経路を避けられるかも確認してください。
地理院地図と自治体の防災マップで調べる
国土地理院は、指定緊急避難場所と指定避難所を「地理院地図」で閲覧できるようにしています。指定緊急避難場所は災害種別ごとに表示でき、2026年3月25日からは指定避難所の情報も地理院地図で公開されました。さらに、ハザードマップポータルサイトでは2026年7月13日から、重ねるハザードマップ上で地理院地図に掲載された指定避難所を確認できるようになっています。
- 住所周辺の危険を重ねる:ハザードマップポータルサイトで洪水、土砂災害、高潮、津波など、自宅に関係する災害を表示します。
- 対応する指定緊急避難場所を見る:地理院地図で災害種別を選び、候補の施設がその危険に対応しているか確認します。
- 自治体サイトで最新情報を照合する:国土地理院の公開データは、市町村が登録し公開に同意したものに限られます。未掲載施設や変更もあり得るため、最終的には自治体の防災マップ、施設一覧、問い合わせ先で確認します。
- 昼と夜の経路を歩く:通常時に無理なく歩けるか、暗い場所、階段、狭い道、冠水しやすい低地、倒れそうな塀がないかを家族で見ます。
スマートフォンの地図だけに頼ると、停電、通信混雑、電池切れで見られないことがあります。自治体の防災マップや、必要部分を印刷した紙を防水ケースに入れ、家族の連絡先と一緒に持ち出し袋へ入れておくと確認手段を分散できます。地図には自宅、第一候補、災害別の別候補、集合場所を書き込みます。
家族で決める5つの確認項目
- 災害別の第一候補:洪水、土砂災害、津波、地震で同じ場所とは限らないため、別々に記録する。
- 第二候補:橋の通行止め、道路の冠水、施設未開設に備え、方向の異なる候補を用意する。
- 移動を始める条件:高齢者、乳幼児、障害のある人、ペット同行など、移動に時間がかかる家庭は早めに動ける基準を自治体情報に合わせて決める。
- 家族の集合方法:日中に離れている場合は、無理に自宅へ戻らず、それぞれの現在地で安全を確保する。最終集合場所と安否確認方法を決める。
- 持ち出しの優先順位:命を守る移動を遅らせない重さにし、薬、眼鏡、補聴器、乳幼児用品、ペット用品など代替しにくい物を優先する。
避難経路は一度決めて終わりではありません。転居、道路工事、家族構成の変化、自治体の指定変更に合わせて見直します。防災の日や誕生日など、毎年確認する日を決めると続けやすくなります。
間違えやすい点と注意
「避難」は避難所へ行くことだけではない
危険な区域の外にある親族・知人宅や宿泊施設へ早めに移る方法、自宅の安全な階へ移る方法なども状況により選択肢になります。ただし、上階への移動では危険を完全に避けられない災害もあります。時間に余裕がある段階で、自治体が示す立退き避難を優先するかを判断してください。
いちばん近い施設が安全とは限らない
距離だけでなく、対象災害、標高、経路上の危険、開設状況を見ます。看板に複数の図記号がある場合も、どの災害に対応する表示なのかを確認します。旅行先や職場でも、同じ考え方で現在地周辺を調べておきましょう。
公開地図は最新情報と併用する
国土地理院も、掲載データは市町村が登録し公開に同意したものに限ると案内しています。災害発生時は、古い印刷物だけで判断せず、自治体から発表される避難情報と施設の開設情報を優先してください。危険がすでに迫り、予定した場所へ向かうことがかえって危険な場合は、近くの堅牢な建物や高い場所など、その場で命を守れる行動を取ります。
出典・一次情報
- 内閣府「令和8年度『防災週間』及び『火山防災の日』について」(2026年8月28日確認)
- 内閣府「避難場所に関すること」(2026年8月28日確認)
- 内閣府「令和8年版 防災白書 指定緊急避難場所と指定避難所の確保」(2026年8月28日確認)
- 国土地理院「指定緊急避難場所・指定避難所データ」(2026年8月28日確認)
- 国土地理院「災害時に滞在するための施設を地図で簡単に確認」(2026年8月28日確認)
- 国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト」(2026年8月28日確認)
- 総務省消防庁「家庭の防災会議」(2026年8月28日確認)